(39)

「俺、昨日、彼女とぶつかったんだよね。F県で。」
我が姉ながら馬鹿だなぁ。
「それは、すみませんでした。姉に代わってお詫びします。」
「で、俺、一目惚れしちゃったわけ。」
は?
まぁ、風姉はすっごいかわいいけども…。
「何が言いたいのですか?」
そう。
要は何が言いたいのかだよ。
考えられるのは、あの計画をやめろ、もしくは風姉を自分のものにできるように仕組めってところかな。
「そう、結論を急がないで。まぁ君は賢いから僕が言いたいことなんて分かってるんだろう?」
「まぁ、二つ程考えられる可能性を考えてますが…。」
「ふうん。君の計画の邪魔をしないほうだよ。」
「それは、つまり…。」
「あの計画に彼女が俺のところにくるように仕組んで。」
さすがだな。
私の考えを読んでる。
「それはいいんですが…。」
「あぁ、君の考えてることは分かってるよ。援助だろう?君のお父さんの会社の。」
「はい。仕組むとしたらそれしかありえないです。」
そう、あいつの会社の援助するかわりに姉を差し出せということしかありえない。
「いいよ。彼女が俺のところにくるなら。」
「でもなぜ姉のことを?」
「一目惚れだって言っただろう?」
一目惚れ?そんなの嘘でしょ?
「でも姉は妹の私から見ても可愛いですが、もっときれいな人がいると思うんです。」
「彼女はぶつかったとき、散らばった書類を丁寧にかき集めてくれたんだよ。何度も俺に謝ってくれてね。」
律儀な風姉らしいなぁ。
「…そうですか。姉らしいですね。」
「君は家族をこんな風にさせてどうも思わないのかい?」
その計画に便乗してる奴が何を言うんだ。
「失礼ですが、それは貴方に関係のないことです。私は実行した後は宮迫と縁を切るつもりです。」
「まぁ俺はそんなことはどうでもいいんだけどね。彼女が手に入れば。」

「あ、宮迫くん。言い忘れたが、来週になったから。その計画の実行は。」
「分かりました。」
来週か…。
「あ、香取くん。今日はここで失礼するよ。」
「ええ。社長。また一緒に飲みましょう。」
言い忘れてたけど、SUNNYの社長さんは香取誠司(28)。

「では失礼しますね。」

私と社長は料亭を後にした。
「月さん。」
社長が私に話しかけた。
「なんです。社長。」
「明のことよろしくお願いしますね。」
「ええ。」
「明が女性に対してひどい扱いを今まではしてきました。しかし、あなただけは違った。」
「はぁ。」
「少し束縛してしまう面があるかもしれませんが、許してやってくださいね。」
「ええ、まぁ。」

*******************

「ただいま。」
「おかえり。月。あいつに何もされなかった?」
「あいつって?」
「誠司さんだよ。」
「されてないわ。特には。」
「良かった…。君に惚れられたらどうしようかと思った。」
「それはないね。」
「なんで?君はすっごく魅力的な女性だよ?」
「ふふ。面白いことを言うわね。まぁ言われて嬉しくないことはないけど。」
「冗談じゃないのに…。これが冗談で言えたらどんなに嬉しいことか…。」
「ん?」
「自覚なしだからなぁ。」
「あ、そういえば、SUNNYの社長が風姉のこと気に入ったみたい。」
「へぇ。風さん、かわいいもんね。」
なんかむかつくなぁ。
「まぁあたしよりはね。」
「何それ?まさか嫉妬?」
「嫉妬じゃないもん。」
「月が嫉妬してくれるなんて夢みたいだ…。いつも俺ばっかりだもんな。」
「だから嫉妬じゃないっての!!」
「風さんより、というかどんな女性よりも月のほうがかわいいし愛してる。」
「…馬鹿。」

「でも、良かった。誠司さんのターゲットが風さんで。」
「なんで?」
「誠司さんは手強いから。」
「そうね。あの人、私の考えも読んでるくらいだからね。」
「だろ?まぁ誠司さんが相手でも月だけは譲らないけど。」
「まぁ私もあの人は苦手ね。策士だし、腹黒そうだもん。風姉大丈夫かな。」
「まぁ、俺からは何もいえないね。」
「来週か…。」
「何が?」
「記者会見。」
「そうか…。俺も社長になんだな。」
「そうよ。私より忙しくなるんだから。」
「ま、月がいるなら大丈夫か。」
「そうね。大丈夫。ちゃんと支えるから。」
「ありがとな。」

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