(Episode2)


兄貴の女友達の宮迫月さん。
兄貴がずっと片思いしている女性。
彼女は兄貴を信頼しているようだ。

そしてその弟である俺に対しても。

「裕真。勉強進んでる?」

そう連絡してきたのは高校に無事入学して文化祭が終わった頃。
月さんは相変わらず、俺に優しい。
彼女は基本的に毒舌だ。
月さんが一層俺に甘くなったのは、そう、あれは俺が高校受験の最中だった。
兄貴は自分の勉強で手一杯。
その頃からモデルの仕事をしていた俺は家庭教師が必要だった。
それで白羽の矢が立ったのは月さん。

月さんははっきりいって天才だ。
自分だって大学受験があるのに必要ないみたいだ。

「月さん。いつ勉強してるの?」
「あたし?う〜ん。学校。」
「え?受験生でしょ?親に何も言われないの?」
「常に自分の部屋にいるし、特に何も言わないわね。」
「羨ましい…。」
「そう?私にしたら、親に気を使ってもらえるほうが嬉しいけどね。」
月さんは寂しそうな顔をした。

月さんの過去の話は聞いた。
兄貴と俺と、百合さんには自分の頭の良さを隠さないし、過去も言っている。
そして月さんが何をしようとしてるのも知っている。

「そういえば裕真くん。モデルの仕事どう?楽しい?」
「ん〜まぁ楽しくないってことはないよ。ただ、女の子がちょっとウザいかも。」
「モテる男は違うね〜。」
「月さんだってモテるじゃないか。」
「モテないって。」
彼女はいつも自分の容姿は中の中だと言う。
世間一般的には上の上じゃないかと思う。
他のモデルより断然かわいい。
兄貴がずっと片思いの理由も分かる。

「月さん、大学って県外だよね?」
「うん。まぁ予定としては金貯めて、卒業したら大企業に就職するつもり。」
「さすがだなぁ。」
「まぁ、親には中小企業って言うけどね。」
「やっぱ凄いな。」
「なんで?」
「将来の設計がきちんとできてるから。」
「私は…。裕真くん、買い被りすぎよ。ただ、そうしなければいけない状態になっただけだし。」
「そう?というか、月さんのことだから、兄貴に好意持たれてるのって分かってるでしょ?」
「…うん。なんだか、静真には甘えちゃって…。」
「兄貴は優しいもんな。」
「うん。私に信頼できるのは静真と百合くらいだもん。」
「俺は?」
「もちろん裕真くんも。」
「月さん…傷ついたら、いつでもこっちに来ていいんだからね。頑張りすぎちゃダメだよ?」
「裕真くん…ありがとう。さ、勉強!ビシビシ行くからね!!私と同じ高校に行くんでしょ?」
「うん。」

月さんは今、一流企業の副社長。
その企業の業績はぐんぐん伸びた。
これも月さんのおかげ。
さすがだなと思う。
バイトが泊まりの時は泊めてくれる。
月さんの婚約者という奴にも会った。
兄貴…残念だったな。
彼女は彼の手に落ちる。
過去の払拭が出来たとき、きっと…。
自覚してるけど、認めたくないって顔だった。
幸せそうだった。
だけどその反面哀しそうな表情が際立ってた。
あぁ、もうすぐなんだ。

もうすぐあれが実行される。
山下だろうとその奥さんだろうと風先生だろうと俺は月さんの味方だから。

俺の初恋の人。
今は目標としている人物。

それが月さん。
だから、月さんの邪魔はさせない。
俺の姉のような月さん。



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