私の王子様…。
どこにいるのかな。
今日はクリスマス。
恋人にとっては大きなイベントの一つ。
キリストが生まれたという日。
そう、今日は聖なる夜。
かじかむ手。
仁科香織(19)は手にハァーっと息を吹きかけ暖をとった。
私には彼氏がいない。
だけど、この場所で毎年待ってる。
“彼”が来るのを。
彼とは5年前ここで待ち合わせをした。
彼は来ることはなかったけれど。
彼は消息を断った。
彼の両親に聞いても、どこにいるかは教えられないという。
彼との最後の約束した場所。
それが今いるところ。
すでに21時をまわった。
「今年もダメだった…。」
来るはずない、そう思いつつも毎年この場所にいる自分が馬鹿らしい。
「…ぉり!…香織!!」
そう呼ぶ声がする。
この声は…貴方なの?
それとも私の願望が生んだ幻聴?
「香織!待て!」
恐る恐る振り返った。
怖かった。
貴方じゃなかったら、また私、来年もここにいてしまうから。
目の前には夢にまで見た最愛の彼。
「香織…!ごめんな?今まで、連絡とれなくて…。今までアメリカにいたんだ。親父のもとで勉強することになって…。急だったんだ。本当にごめん。やっと帰ってこれた。なんだか…言い訳みたいだな。」
「本当に…隆志?私、幻覚見てるんじゃないよね?」
「馬鹿。本物だよ。また一段とかわいくなったな。」
「たかしこそ。かっこいい。」
「これからはまた香織の傍にいれる。香織が俺のことまだ好きでいてくれるか不安だった…。俺には香織が必要だ…。まだ俺の彼女でいてくれますか?」
「…当たり前だよ。私もあなたが必要なの。あなたなしじゃ生きてけない!」
「良かった…。ホントに遅くなってごめんな。」
「ううん。いいの。あなたが戻ってきてくれたから…私…それだけで嬉しい。」
大きなヤドリギの木の下で、二人は甘い時間を過ごした。
お互いの存在の大切さを身にしみたこの5年がお互いへの愛を大きくした。
今日は聖なる夜。
こんな奇跡、あってもおかしくない、そんな日。
I wish you had a good Noel...