(32)


もうすぐ始動する。
そう。
あの計画。
あと2ヶ月。

「月!どういうことなんだ?これ。」
奴が私のところに問いただしにきた。
「どういうことって…?」
「なんで自分の親の会社を潰そうとしてるんだ?」
「それがこの会社に勤める時の私が持ちかけた契約だから。」
「なんで?家族のこと好きじゃなかったのか?」
「好きだったわね。気付かなかった頃は。」
「だからか…義姉さんの結婚式の表情。」
「そうね。あいつが自分で首をしめたの。私を見捨てたから。いや違うわ。女だったから。あいつは最初から私を望んじゃいなか
った。馬鹿よね。私。あいつが幼いときに遊んでくれたから。男が良かったというあいつの言葉、我慢してたんだから。」
「そんなことしたら月が傷つく!」
「知ってるわよ!!でも忘れられないのよ!あいつの言葉たちが…未だに私を苦しめる。」
「でも…。」
「もう、やめることなんか出来ない。私はもう後戻りなんか出来ないのよ。」


後戻りできない。
そう。
絶対に。

自分が一番傷つくことなんて最初から分かってる。
あれでも私の父だもの。

『逃げるのか?』
最愛の父から突き放された言葉が私を動かす。

『なんでお父さんを怒らせるの!!』
最愛の母から見放された言葉が後戻りなんかさせない。

過呼吸になっても、毎晩悪夢で涙を流しても気付きもしない。

最初から、私のことなんか見てなかった。

今でも私のことを馬鹿にしてる彼ら。

自分よりも劣ってると思っている彼ら。

自分よりも勝ってるものはSUNNYに就職した鳥で何よりも心配する彼ら。

私を生まなければよかったじゃない。
そんなに男が良かったなら。
何も私の前でそんなに言わないでもいいじゃない。

許せない。
許せないの。

無視しとけばいい。
周りはそう言う。
家族だから無視できないこの憎しみ。

夢にまで出て同じことを言うんだ。

朝起きると涙が出てる自分がいる。

嗚咽をともなって泣いてる自分がいる。

夢で過度のストレスを感じ、夜中胃痛に苦しむ自分がいる。

あと2ヶ月。

そう、義兄さんにも言った。

タイムリミットは刻々と近づいている。

止められやしない。

誰であっても。

それが私でも。

私でさえも私を止められやしないんだ。

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