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今日もいい天気…。

ガラーン!!!

「滝沢〜お前また遅刻か!?」
「あ〜すんません。」
「まぁ、いいから席につけ。じゃあ、続けるぞ。45ページ…。」

わたくし、滝沢 じゅん。17歳。
青嵐高校の第二学年、出席番号は35番。
大体の先生には≪遅刻の滝沢≫といえば「あ〜あの滝沢ね。」という感じで認知されている程の遅刻の常習者だ。
そんな私だけど、出席簿に遅刻の印がつくことはない。
なぜなら遅刻するのは朝課外だからだ。
正規の授業には間に合っているのであまり問題はない。

キーンコーンカーンコーン

「またお前遅刻かよ。」
「うん。」
「しっかし、お前よく先生に叱られないよな。」
「もう呆れられてんじゃない?」
「本当に呑気だよな。お前って。」
こいつはクラスで結構仲が良い男子の一人の笹野 翔。
校内ナンバーワンのモテ男。
最近、1年生の彼女ができたらしい。
「いいじゃん。あたしの長所だよ、長所。」
「いやその呑気さは短所だろ。」
と横槍をいれてきたのは奥野 比呂。
こいつは翔の彼女の幼馴染で、翔の親友。
「しかもそれでいて成績がいいって嫌味よね〜。」
この女子は岡部 秋子。私の親友。
「羨ましいでしょ〜。」
「まじ、こいつ殴りてぇ。」
「あんたは彼女さんにでも教えてもらえばいいやろ〜♪」
と秋子が茶化す。
「おぼろは年下だって。」
「聞いた?おぼろだって〜。名前で呼んじゃって。ひゅーひゅー。」
「古いっての!!」
秋子と翔のやり取りを見ながら私と比呂は横で爆笑している。

「あの!!」
いきなり声を掛けてきたのは今時流行らないビン底の黒ぶちめがねの優等生の通称委員長。
「なに?うるさかった?」
そう答えたのはこのわたくし。
「あの、滝沢さん!話があるんですが…?」
「何?あんたが私に説教をするつもり?」
「こいつに説教しても疲れるだけだぞ〜。」
「翔、うるさい。」
「違うんです。」
「じゃあ、何?」
「ここじゃ、話にくいんですが…。」
「分かった。場所を移そう。まだHRまで時間があるから、屋上でいい?」
「はい。」
そう言うと二人で教室を出て行った。

「まさかの告白じゃね?」
「そうかもね〜。しゃべらなきゃ結構可愛い顔してるし、じゅんは。」
「ははは。」
残された3人がそんな話をしているなんてことを知らずに。

「話って?」
「あの…俺と契約しませんか?」
「はぁ?何の?」
いきなり契約とか訳の分からないことを…。
「その…あなた…と…俺…との子孫が欲しくて…。」
「はぁ?嫌よ!!それってあんたとS○Xしろってこと?」
「えぇ?違いますよ!!えと…あの…。」
「はっきり言いなさいよ!」
いらいらしてきた。
「あの!あなたの“犬”と俺の“犬”との子孫が欲しいんです!!」
「はぁ!?なんで?」
「えっと、あなたが犬と散歩してるのをみかけて…その…。」
「なるほどね。でも、お断りよ!!」
「えぇ!?」
「当たり前よ。あんたみたいな変人が飼い主の犬ってたかが知れてるわ。」
そうよ。
言い方ってもんがあるじゃない?
紛らわしい言い方しちゃって。
「…でも、俺あきらめませんから!!」

こうしてこの通称委員長と呼ばれる学年主席の南 裕真の交渉が幕を開けた。

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