(9)Last Story

*SIDE翔

あれから一ヶ月。
おぼろが息をひきとってから。
俺は夕方おぼろのお母さんに家に呼ばれた。

「あの…。」
「翔くん。おぼろの部屋を片付けていたらね、こんなものを見つけたとって。」
そういって差し出されたのは一通の手紙。
そこには「先輩へ」と書かれていた。

「あの子、自分がこうなるって分かっとったみたい。」
「読んで…みていいですか?」
「うん。読み終わったら、私にも見せてくれる?」
「はい。勿論です。」
そう言って、俺は封をあけた。




先輩がこれを読んでるってことは私は死んでるってことですよね。
嫌な予感はしてました。
退院した日からずっと頭が痛くて…。
きっと、脳がいつか壊れるんじゃないかって。
病院に行こうと思わなかったのかと思いますよね。
でも、認めたくなかった。
先輩の傍にいたかったから。
だからどんなに痛くても我慢できたんです。
それに行ってももう手遅れな気がしてました。
入院することになって、余命宣告されたらつらいですから。
残り少ない命を病院で過ごし、先輩の哀しそうな顔みたくなかったんです。
それより、先輩との楽しい時間を少しでも多く過ごしたかったんです。

先輩。
今まで何も感じるものはなかったんです。
ただ自分を隠すだけ。
自分を出すと嫌われちゃうから。
でも先輩が私をモノクロの世界から引きずり出してくれた。
先輩の存在がどれだけ大きかったか、先輩は知らないですよね?
先輩と過ごす日々はどれもがとても輝いていて、そのどれもが宝物なんです。
先輩ともう少しだけ、ううん。ずっと一緒にいたかったです。
ちゃんと遠くで見守っていますから。
でもね、どうか朧月夜のときだけは私を思い出してほしいです。
一緒に過ごした日々を思い出してほしいです。

先輩、愛しています。
しかし、私の死は先輩を、先輩が恋することを踏みとどめさせるかもしれません。
でも、私は先輩には私の死を乗り越えて新しい運命の相手を見つけることができると信じています。

先輩の幸せを願ってます。

おぼろ




「今だけは泣いてもいいよな。」
そう言って空を見上げた。
涙で霞んで、まるで朧月を見ているかのようだった。



君のことが
よく見えないんだ
涙で霞んで…



END

A Hazy Moon=朧月


あとがき

終わりました!
『A Hazy Moon』はいかがだったでしょうか。
私にとってこの話は曖昧な物語の構成だったため、最初らへんは苦戦しました。
物凄く展開が早いなって自分でも思いましたが、詳しく書くと本当にラブラブ甘々になってしまうんで、シリアスを目指してたから、途中で止めました。
だから、中編の方に移したんです。
同じ学校で、違う生徒が主役の新作も予定してますのでお楽しみに!


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