(12)

「は!?別にいりません!!」
「君のTOEICの結果、見させてもらいましたが、少々ひどいですね。」
某メダリストではないが。
何にも言えねぇ。
英語は苦手だった。
全部他でカバーしてきた。
だからといって高校時代から足を引っ張っていたというわけではない。
つまり並み。
私の場合他が突出していたから、それを抑えるのに苦労してたくらいだ。
少々ひどいとは副社長としてということだ。
英語には興味がない。
ちなみにロシア語、ドイツ語、フランス語、ギリシャ語は得意だ。
たぶん日常会話は普通にできるくらい。
検定1級持ってるくらいだし。
「なんで英語はそのくらい興味を持てなかったんですか…」
「反抗期ですよ。皆やれば英語は出来るから、敢えて反抗を…。センターではフランス語もOKですし…。」
「はぁ…今日の7時から家庭教師を向かわせます。」
「ちなみに私の拒否権は…?」
「あるわけないでしょう?目標は次のTOEICで800点以上です。」
「…御意。」


社長は同属なので、結構気軽に話せたりする。
同属嫌悪にはならかったみたい。
それにしても家庭教師か…。
どうせ、普通にしても定時で帰れてしまう自分にがっかりだ。
私の場合、興味を持てばこっちのもん。
そうやって他の言語はマスターしてきたのだったから。
次は広東語でも勉強しようかと思ってたのに。
あ〜あ、こんなんだったら、世界に反抗してやるとか思わなきゃ良かった。
反抗して勉強してないにもかかわらず人並みなのは幼稚園のときの英会話のおかげ。
本当に憂鬱。


「星羅、何ぼーっとしてんの?」
出ました。
久しぶり登場の同僚の由美。
今回は珍しく一つのことでぼーっとしてたみたい。
「家庭教師が来るんです。」
「なんで?」
「TOEICの点数があまり芳しくなくて…。」
「何点?」
「700点。」
「はぁ!?めちゃくちゃいいじゃん。」
「社員としては十分ですが…。」
「成る程ね。で、何点合格?」
「800点。100点も足りないんですよね。」
「…贅沢な悩みよね。」


そんで、今6時50分。
私の頭の中で、来るかもしれないと思われる人物。
高原明。
奴は基本的に社長と同属。
でも、私とは同属だけどどこかちがう。
だから勉強は全て出来るはず。
今日悩んでいたのは主にこのこと。
不覚にもずっと頭にあったのは奴。


ピンポーン


「は〜い。」
ドアを開けるとそこには明とは違うイケメン。
「今日から君の家庭教師の高原爽。よろしくね。」
「奴のご兄弟か何かですか?」
「そうだよ。明の弟で君と同い年。」
「同い年に勉強を教わるときがくるとはね。」
「親父から、聞いてなかった?俺は君に英語教えて、君は俺にドイツ語とフランス語を教えるって。」
「…なるほど。社長には敵わないな。」
「言えてる。君K大だよね?俺に教えれんの?」
「失礼ね。あたしがどれだけ点数を抑えてきたか知らないくせに。」
「変な奴。」
「よく言われる。」
「そういうところが兄貴の目にとまったのかもね。」
「非常に迷惑だよ。君の兄貴は。」
「あ、それ分かる。」
「あたし、君とは気が合いそう。」
「俺も。」
「じゃ、始める?」
「そうしよっか。」

そう言って、教えあいっこが始まったのだ。
彼も、物覚えが速くて教えるのも簡単。

彼と私の作った料理を囲んで夕食を楽しんでいると、チャイムが鳴った。
「シカトしてたい。」
「同感。」
カチャっと鍵が開く音がして
「どういうことなんだ!!爽が月の家庭教師だなんて!!!」
「それより、爽、美味しい?」
「うん。月って料理上手だね。」
「シカトすんな。」
「だって爽のために作るんだもん。腕によりをかけました♪」
「もう俺の妻になってほしいくらいだよ。」
「爽なら大歓迎だし。」
「…月、もうギブ。」
「やだ、高原さん、お見えになってえたの?爽に何かしたら…消すよ?」
そう、奴は爽の妻になってほしい宣言に怒り心頭。
爽につかみかかっていたのだった。
「冗談の通じない人ってつまらないよね?」
「そうだよ。兄貴。冗談ってことわかんない?」
「じょ…冗談?」
「そうです。そんくらいで感情をあらわにしては社長の跡をつげませんよ?」
「だよね。俺にとられちゃうよ?まぁ狙ってないけど。」
「君って人はなんていじらしいんだ!!!!!!!!」

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