(13)

今日は由美とショッピング。
久しぶりとまではいかないけれど、かなりの確率で休日出勤。
社長は本当に人使いが荒い。
爽はなぁんか見たことあるなぁと思っていたら、社長秘書なんだって。
生まれも育ちもアメリカだから飛び級したんだとか。
まじその恵まれた環境にびっくり。
だから、散々社長にこき使われている爽とは気が合うのかと一人で納得してみたりして。

今回は愛する我が母の誕生日のために買い物に来たわけだ。
洋服とか小物とか見たけどなんかぱっとしない。
っていろいろ歩き回ってるんだけど、なんか隣が怪しい動きをしている。
さっきから時計を事あるごとにみたり、きょろきょろ周りをみてる。
いつもの彼女は商品しか眼中にないあの由美が。
私の頭の中の彼女の怪しい動きの原因の候補として、
@誰かと企んでる。
Aもしくは誰かと企んでいる。
Bまさかとは思うけど誰かと企んでいる。
C信じたくはないけど誰かと企んでいる。
さて、どーれだ!!
ん?どれも同じだって?
ばれちゃあしょうがない!!
きっと由美は奴と企んでいる。
どうしたものか…。
私が物色に夢中になったら代わるとか考えてるんだろうけど、甘いよね。
トイレとか行ったときに代わってたりして…ってまさかその通りかよ!!
トイレから出てきて目に入ったのは…はぁ。
他人のふりして横を過ぎると
「え!?まさかのスルー?」
「あの…忙しいので、ナンパとかやめてもらえます?」
「っておい!!」
「冗談通じない男とは買い物しません。」
「冗談だって分かってるし!!そう思わなきゃ普通やってけないだろ!!」
「強がっちゃって。あーやだ。」
「俺をいじめて楽しい?」
「はい☆」
「☆なんか付けちゃって…」
「では♪」
「さりげなく去ろうとしちゃって…」
「…ちっ」
「さっ俺とデートしようね。」

結局こいつと買い物かよ。
奴は無駄に容姿がいい。
そう"無駄"に。
女の嫉妬の視線が痛いっつうの。
これだから嫌なのよね。

「義母さんは何が好きなの?」
「ちゃっかり義母さんとか言うな。好きなのって言っても、高いのは買えないから迷ってるんです。」
「俺が出すよ?」
「何にも分かってないですね!家族には私が仕事してるなんて知らないんです。バイトしてたのだって黙ってたんですからもらっ

たものは自分の財布からでてるって思ってるんですよ。」
「ごめん。忘れてた。」
「…花を贈ろうと思うんですが、何の花がいいと思いますか?」
「なんで俺に聞くの?」
「知ってそうだからです。」
「そういうことね。ん〜、義母さんの写真ある?」
「写メなら…。」
「義母さんと似てないね。」
「…何が言いたいんですか?」
「いいや。何にも。サフランとかは?」
「歓喜、節度ある態度か…」
「花言葉なんてよく知ってるね。」
「好きですから。当たり前です。」
「へえ意外。」
「どうせ花なんか似合いませんよ。」
「そういう意味じゃなくて、いつもなら興味があるとかそういうニュアンスでしか言わないじゃん?だからそんなストレートな言い方ってことは本当に好きなんだなって。」
この男なんて目敏いんだ。
「母ならセイタカアワダチソウがお似合いなんですけど、サフランにします。」
「そのなんたらソウの花言葉は?」
「生命力」
「プッ。不器用っていうかなんていうか。」
「こんな風に育ちたくて育ったわけじゃないですから。」
「そんなところもかわいい。」
突然すぎて真っ赤になってしまった。
こんな奴に振り回されてる自分にため息が出るよ…。

「まだ、何も聞かないから。君が抱えてること。聞かないから。」

こいつは…。
バレてたんだ。
私があいつのことで苦しんでたのを。
そういえば奴は私が寝てるときでも勝手に入ってくるからか…。
この人格もあいつのせいだって。
そういう意味で言ったわけじゃなかったんだけどね。
とことん私に甘いよ…。
ちょっとは婚約者だって思ってもいいかも。
ちょっとだけ…。

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