(15)

女の人がごったがえす。
まさしくブーケが投げられようとしていた。
私はというと横のほうに避難していた。

キャー!!

ブーケは宙に舞い、なぜか私のところに…。
振り返った花姉は私にウインクしてた。

なんだかんだ、私がおかしかったのに気付いてたのは女王気質の花姉だった。

泣くつもりなんてなかったのにな。
涙を浮かべて私は花姉にとびっきりの笑顔を贈った。

披露宴では私はビデオ撮影。
花姉の友人のところに行かされたりした。
大きくなったねって言われるのが心底嫌いな私は乗り気じゃなかったけど、今日は頑張れた。

でも恐れていたことは起きた。

「君、何歳?」
「19歳ですけど…。」
「そっか…。いや、会社にね、君に似た人がいるもんだからまさかとは思ったけどやっぱり人違いだったみたい。」
そう言って彼は頭をぽりぽりかいた。
この人、見たことあると思ったら、会社で私に告白してきたやつだ…。
同僚がいるかもしれないとは思ったが、まさか告白してきた人だなんて。
「そうですね。私はまだ大学生ですし。」
「うん。彼女、25歳だって言ってたから。」
「もしかしたらドッペルゲンガーかも!!」
「はは。それはちょっと怖いね。」
「では。」
「ちょっと待って!!えと、あのね?メアド交換しない?」
「…私はその人の代わりになんてなりたくないんで…。」
「君、勘がいいんだね…。」
勘はいいけど、この場合はどっちもあたしだからね…。
「よく言われます。」
「面白い子だなぁ。」
「それも、よく言われますね。…あの…姉とはどういう関係だったんですか?」
「君のお姉さんの高校時代の友人だよ。」
「へぇ。高校ってことは、まだ私が小学校の低学年ですね。」
「ジェネレーションギャップ感じちゃうなぁ。」
「当たり前ですよ。年が離れてるんですから。」
「ははっ、そうだね。」
「どこにお勤めになってるんですか?」
知ってるけど、まぁ社交辞令で。
「○ヨタだよ。年下と言えば、俺の上司がさぁ、年下でね、嫌になっちゃうよ。」
「年下?」
「そう、3つも年下に先に専務になられちゃって…俺狙ってたんだけど、あいつ優秀すぎんだよね。」
「へえ、そんなすごい人いるんですか…。」

やっぱり奴はただ者じゃなかったか。
でもなんでこの人奴が社長ジュニアってこと知らないんだろ…。

「でも、一番優秀なのは新しくなった副社長でさ、働きっぷりが尋常じゃないんだって。」
あたし、外から見たらそんな風に言われてんだ…。
知らなかった…。

「そうなんですか?」
「そうそう。今の副社長今までそんな人には見えなかったのにな…。」
だって本当はあたしだもん!だなんて言えない…。
「あっ、この話つまんなかったよね!!ごめんね?」
「いえ。未知なる世界だったんで結構面白かったです。」
「そう?あっ、君に似た人は、派遣の女性なんだけど、なんか異様な雰囲気を醸し出しててね?ミステリアスなんだ。俺はそんな

ところに惹かれたんだよね〜。」
自分に惚れた経緯なんて聞きたくないな。
「はは。もう、次に行きますんで…」
「長く引きとめちゃってごめんね?」
「いえいえ。」

まぁ、なんか自分がどう見られてるのか分かってよかったかも。
ふふふ。
奴が優秀か…。
笑えるし。
あたしには歯が立たないのにね〜。
あ〜おかしい。

「何がそんなに面白いの?」
ん?
この声…まさか…。
「はっ初めまして。」
「そんな、初めてじゃないでしょ?それにしても来て正解だったな。君を狙う狼ばかりだ…。」
「どちらさまですか?」
「あんまりそんなこと言ってると、怒るよ?」
「私の方が怒ってるんですがね!!!」

「あら〜やっぱり月、彼氏いるんじゃない!!」
おっお母さん…

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