(16)

「義母さまでしたか。この度は本当におめでとうございます。」
「これはこれは。ありがとうございます。月、いい人じゃない!!」
「…はぁ。お母さん。違うの。この人彼氏じゃない。」
「で、どこで知り合ったの?」
はぁ、聞いちゃいないし。
「僕が落とした携帯を彼女が拾ってくれまして、それで知り合いました。」
勝手に作っちゃって。
まぁ本当のこと言われるよか大分いいけど。
「今回は義姉さんが結婚なさると聞き飛んでまいりました。」
「あらあら。これはお忙しい中ありがとうございます。」
もう!嫌になっちゃう!!
「お母さん?ちょっとこの人に用があるから二人にしてもらえる?」
「ふふふ。お母さんにやきもち?」
「断じて違う!!」
そういって奴を連れ出すと、
「何がしたいんですか!?はっきり言って迷惑です。」
「俺は君が心配なだけだよ。月が泣いてるんじゃないかって。」
「どうして?」
「幸せそうな家族を見ると、今発動している計画を想って苦しくなると思ったから。」
「知ってたの?」
「なんとなくだけど。」
「もういい。帰って。」
「好きな女が悲しむのはいやなもんでね。」
「じゃあ嫌いになってくださりません?」
「拒否しますね、お嬢さん。」
「はっ、どの口からお嬢さんって言葉が出るんだか。」
「ね?俺といるとあんまり考えなくて済むでしょ?」
「勝手に言ってれば?」
「まぁ、月がタメ口きいてくれただけでもいいとしよう。」
「…あんたどこまでプラス思考なの?」
話していると、風姉が近寄ってきた。
「何々?あんた彼氏いたわけ?」
またこいつは…!!!
「違う。」
「照れんなって!」
「…はぁ。」
「なぜそこでため息?」
ため息もつきたくなるわ!!
好き勝手言いやがって!
「月、こちらの方は?」
「姉の風です〜♪妹がお世話になっております。」
「いえいえ。」
「…はぁ。お母さんもそうだけど、誰も付き合ってるって言ってないじゃん?」
「でもさ、嬉しくて…。彼以来じゃない?」
「…彼とは?」
「…余計なこと言わないで。明さんには関係ないことだし。ほら、戻んなきゃ!」
「あっ、鳥が月のこと呼んでるって言いにきたんだっけ。忘れてた。」
「でしょ?じゃあ、明さん。失礼します。」
ぺこりとお辞儀をして戻ろうとした。
「待って。」
ぐいっと腕をひかれた。
「…風姉。先に行ってて。」
「りょーかい。鳥が寂しがってたから早く来てね。」
「ほ〜い。」
すたすたと風姉が戻っていった。
「彼って誰?」
「元彼。」
「彼以来ってことは忘れられなかったってこと?」
「そんなことはない。」
「じゃあ何でお姉さんは喜んでたの?」
「ただの勘違いよ。」
「ていうか、俺に関係ないって言ってたよね?どういうつもり?」
「…」
「俺、一応婚約者でしょ?関係ないことはないよね?」
じりじり詰め寄る。
なんかあたし、現在の立場、弱くない?
こういうときは…皆無に近い色気を使ってみるか。
時機を見据えて…。
体が密着したときに顔をあげた。
「…ごめんね?」
「ぇ?…ぁ、え?」
いわゆる上目遣い。
あたしに色気がなくっても効果覿面みたい。
「関係ないっていうのは元彼のことはもう過去のことだから…。機嫌直してくれる?」
出血大サービスだ!!
奴の思考が戻ってきたのか、
「じゃあ、キスしてくれたら直す。」
調子乗りやがって!!
誰がするかよ、ばぁか!!
「じゃあ目を瞑って?」
素直に目を瞑る、奴。
でもね、油断禁物なんだよ?
するっと抜け出して、私は会場に戻っていった。

「あれ?月?いない?…嵌められた!!!」

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