(17)

やってまいりました、この季節。
ゼウスの新CMを作ることになりました。
前回は神楽が担当したやつ。
不本意ながら私も出演しなければならなくなった。
実はCMが流れ始めたときマスコミとかがあの女性は誰だって問い合わせが凄かった。
そんな私ですとか言えるわけもない。
どんなCMだったかというとなんと私が天使みたいな感じで四人の下に舞い降りてくるみたいなやつ。
私は後姿だったから基本的にはばれてない。
んで、本題に戻ると今回は神楽出演じゃないです。
彼らは今コンサートで忙しいから、急遽ROSEというバンドに音楽提供をしてもらうことになりました。
彼らがどんなCMにしたいかとか誰を出演させるとかこれから話し合うんだけれど。
「さぁ、月、行こうか。」
なんでこいつまでいるのかな。
上の命令で今回の責任者は高原明(24)。
上って社長のことね。
まぁ副社長だけど、今回ばかりは立場が下なわけ。
「御意。」

やってきたのは喫茶店。
彼らが指定してきた。
何やら喫茶店にいたらいろんなアイデアが浮かぶんだとか。
今日の私のスケジュールはあとこの打ち合わせのみ。
気が楽だ〜。
責任者じゃないし♪
10分前行動が当たり前な私たちは、だれもいないテーブルについた。
勿論、初対面なので彼らが指定した席だけども。

20分後。

「遅れてすいませ〜ん。」
この人はギターでリーダーのSIN。
「今回はよろしくお願いします。」
珍しく奴は深々とお辞儀をした。
「責任者の高原です。そしてこちらが前回の責任者だった広報部長の蛍原です。」
紹介されて一応お辞儀した。
「へー、部長さんなんだね。君。」
「若輩ながら部長をやらせて頂いております。」
この人はボーカルのAYU。
フランス人かと思わせるような甘いマスク。
「君も専務なんだって?何歳?」
「24歳です。」
この人はドラムのRUI。
「若えな。」
んでこちらがベースのGEN。
社長が奴を責任者にしたのは彼らが大スターだからだ。
日本だけでなく世界をも魅了する彼ら。
副社長が自ら行っては駄目だし、私が副社長だと彼らにナメられるから。
だから実質トップ3の専務である奴が責任者に選ばれた。
「えっと蛍原さんが前回のCMを手掛けたんだよね?」
「はい。神楽の人たちに意見を聞きながら。」
「じゃあさ、あのCMに出てた女も知ってるわけ?」
「えぇ。まぁ。」
私なんだから知ってるっちゃあ知ってるけど。
「彼女って一般の人?」
「まぁ、一応そうなりますね。」
「俺たちの一致している意見なんだけど、また彼女に出て貰いたいんだ。」
「えぇ!?駄目です!!彼女は駄目です。」
それはそれは大慌てで拒否している奴。
今回ばかりは共感だ。
「もしかして君の彼女だったりする?」
「ぁ…あ、その…。」
なぜ否定しない!!
「今回作った曲が彼女の雰囲気にピッタリなんだよね。」
「顔が見えなかったのに分かるんですか?」
「だって彼ら、今までにない表情してたじゃん?」
「そうそう。彼女のことをとても愛しく思ってるみたいなかんじ。」
「彼らをそんな表情にさせる人だから君みたいな美女じゃないかと。」
「旨いことおっしゃいますね。」
「まぁね。」
「でも!!駄目です!!彼女を出したらマスコミとか問い合わせが…!!」
あら、まともな意見じゃない。
「ん〜じゃあ、この話はなかったことにしてもらえる?」
…しょうがないな。
こちら側の立場が弱すぎる。
彼らがわが社のためにわざわざ作ってくれたんだし。
奴も悔しそうな顔してる…。
「わかりました。彼女…と言ってもあれは私なのですが、出させて頂きます。」
「えぇ!蛍原さんだったの?」
「はい。一応あれは私です。」
「なるほどね。あの神楽が恋しちゃうわけだ。」
「んで君は彼女の彼氏なんだ?」
「違いますよ。形としては婚約者です。」
この言葉を聞いて奴はものすっごい嬉しそうな表情だ。
「へぇ。そうなんだ。」
「じゃあ高原くんだっけ?君も出たら?一緒に。」
「そうだな。どうせ恋人役を探さなきゃだったし。」
「君、タレント並みの美形だしな。いいんじゃない?」
あ!?嫌だよ!!恋人役!?冗談じゃない!!
「え!いいんですか♪ゆ…星羅の恋人役なら喜んで出ますよ!!」
あ、月って言おうとしたな、こいつ。
まぁ知らない人よりかはいいけど…。

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