(23)

打ち上げの会場に到着。
そこには瀬野が待ちうけていて、私にさっとパソコンを差し出した。

「今日の打ち上げは私が持ちますんでどうぞ、楽しんでいってください。」
そう、私が言うと、
『イェーイ!!』
参加していたスタッフさんたちは大喜びだ。
すると、鳥が近づいてきて
「ちょっと大丈夫なの?」
と聞いてきた。
無論大丈夫だ。
「愚問ね。私を誰だと思ってるの?」
「あ、そっか。ていうかあんたの収入って月いくらくらい?」
私は指を2本立てた。
「20万?」
「んなわけない。」
「じゃあ200万?」
「う〜、違うんだなぁ。これが。」
「にっ2000万?」
「ビンゴ。だから遠慮しないで。」
「やばすぎでしょ。あんた。」
「それくらい働いてるってことだよ。じゃ、私は仕事しとくから。」

そう言って、端っこの席に移った。

カタカタカタカタ…。

盛り上がっている会場の中、明らかに場違いな音。

「部長。今どのくらい終わってますか?」
そう瀬野が聞いてきた。
「う〜ん。3割かな。」
「え?もう3割ですか?」
「うん。あ〜でもちょっと休憩を兼ねて勉強したいから、確認お願いできる?」
「それは構いませんが、勉強で休憩になるんですか?」
「いやね、最近始めた広東語にはまっちゃっててちょっと進めたいんだよね。」
「はぁ…。」
「じゃあ、よろしく。」
そう言って広東語の勉強を始めた。

カリカリカリ…。

またまた明らかに場違いな音。

「あの…。」

「ん?何?終わった?」
「はい。どこも間違えなどありませんでした。」
「ほんと?なら、あと7割か…。すぐ終わらせちゃうから。」
「何かお食べにならないんですか?」
「う〜ん。仕事が終わってからでいいや。」
そんなこと話していると、鳥がやってきた。

「進んでる?」
「まあね。」
「どれどれ…。」
鳥はパソコンを覗きこむ。
「あんたこれ、どれだけの時間でやってるの?」
「さっき、休憩してたから…。30分くらい?」
「あんたどんな頭してんの?」
「こんな。」
「信じられない…。」
私は鳥と話しながらも着々と進めている。
「何その尋常じゃないタイピングと情報処理。ていうかさ、今私と話してるじゃん?なのになんで速さ変わんないの?」
「そりゃ同時に頭で考えてるからね。」
「何、その神業。」
「あ、それより、ROSEの方たちどうだった?」
「え?めーっちゃかっこよかったし!」
「そりゃそうでしょ。」
「あたし、あんたの姉で良かった〜。」
「そりゃどうも。」
「じゃあ、邪魔しちゃ悪いし、戻るわ。」
「うん。楽しんできて。」
鳥は戻っていった。

ガラ…。

「星羅!こんなところでも仕事するのか?お前は。」
奴が戻ってきたのだ。
「あんたの父親が仕事減らしてくれなかったからでしょ?今日の分のノルマが普通どおりにあるわけ。」
「ご…ごめん。でも、俺は終わらせたし!」
「あんたと同じにしないで。こっちはどれだけ量があると思ってるの?」
「そっか…俺、手伝おうか?」
「いい。別に。もう、終わるから。」

そう、もう終わるのだ。
「え?」
「もう、お腹空いたの!だから、いつもの倍速でしたから終わったわけ。分かった?」
私はそういうとカウンターの方に移った。
勿論奴はついてきたが。
これで、鳥との契約は成功だし、まぁ一件落着かな?

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