(24)



げほっ。

さっきから咳がとまらない。

ピピッ

体温計の音。

38.2℃。

はぁ〜。
「さすがに今日は無理かも…。」
そう言ってふとんに戻る。

ピーンポーン。

あぁ、柚月か…。

「ゆっえちゃ〜ん!」
柚月は元気に入ってくるが、返事する気力もない。

「ん?どした?」
「風邪です…。」
「ありゃー。何度だった?」
「38.2℃」
「そりゃ、ダメだね。今日は休まなきゃね。」
そう言うと、柚月は携帯を出し、瀬野に連絡した。

「あたしもさ、今日違う仕事が入ってるからさ、代理頼んだから。多分もうすぐ着くんじゃない?」
「代理って誰?」
「それはひ・み・つ。」
「まぁ、誰でもいいですが。」

ピーンポーン。

「早いな。さすがね。じゃあ、私はこれで失礼するわ。」
「ゆえー!!!!大丈夫?何か食べた?お薬飲んだ?」

あちゃー。
うるさい奴登場だよ。
最悪。
「じゃあ、明。頼んだわよ〜。」
そういうと柚月は帰っていった。

「何も食べてない…けど、食べれないから…いらない。」
「ダメ!!ちゃんと食べなきゃ。俺が作るから、台所借りるね。」
私の返事も聞かずに台所の方に向かった。

食べれるもの作ってくれるのかな…。
それが一番の不安だった。

「ジャーン!!どう?」
目の前にはちゃんとした卵雑炊。
「あんた…料理できたの?」
「うん。月ほどじゃないけどね。」
まぁ、私は趣味でかなり凝ったものまで作るからな。

一口食べると、それがなかなかの美味で。
「美味しい?」
「うん。」
「良かった。全部食べれそう?」
「これなら大丈夫かも。」
「じゃあ、薬用意するね。」
「ありがとう。」
「なんか、素直な月もかわいい…。」
まぁそんな言葉はスルーだけど、まじでこの雑炊は美味しかった。
胃に優しい感じがまた、いい。

「そこはやっぱりシカトなんだ…。」

「はい。薬。飲める?」
「うん。大丈夫。」
「じゃあ、ゆっくり休まなきゃね。明日はユノーのCM撮影だろ?」
「うん。そだね。」
薬をごくんと飲むとふとんにもどった。
満腹と薬のおかげで眠るのなんて容易いものだった。

「…お願いだから、早く俺を好きになって…。」
奴が切なそうな顔でこんなことを呟いたのなんて気付かずに。




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