私とあなたの恋はとても儚い夢だった。
少なくとも私にとっては。
とてもきらきらした世界だった。
だから、貴方との唐突な別れは私を暗い深海の奥底まで突き落とした。
世界が暗かった。
どうしようもない、やりきれなさ。
どうしようもない、もどかしさ。
縋りつくその姿を自分で滑稽に思う。
第三者から私を見ている自分がいる。
私の全てが壊れた1ヶ月。
その時がもう、そこまで来ていた。
体育会の練習が始まる8月後半のある日。
私はブロック対抗リレーに選出された。
彼と私は交際していたが学校ではこのことを知っているのは数名だけ。
そのことを知っている友人には毎日のように惚気話をするようにまでなった、体育会。
一生懸命彼が出場する種目で彼を探し、彼を見つける度に胸がときめいた。
そして私はというとブロック対抗という大役の重さに悩んでいた。
足が、持ちそうになかったからだ。
中学までバスケをしていた私は長年のひざにかかる負担から足を痛めていた。
だからといって今更無理だとは言いづらい。
3年生にとってこれが最後の体育会なのだ。
嫌な予感だけは昔からよくあたる。
これも例外ではなかった。
私は名前も分からない同級生の男子からバトンをもらう。
ズキ…。
気のせいだ。
そう自分に言い聞かせても痛みは増すばかり。
これだけは走りきらなくてはいけない。
これだけは。
バトンを渡せたのはいいものの最下位だった。
足の痛みと足を引っ張ってしまった申し訳なさで涙がでた。
症状は足の筋の炎症。
歩くのがやっとだった。
自分の不甲斐なさでその日は落ち込む一方だ。
終わったものはしょうがない。
そう思うけれど3年生に申し訳なくて。
悪い出来事はたて続きに起きるもの。
この体育会の出来事はこれから迫り来るさらなる悪い出来事の序章にしかすぎなかった。
それは体育会の翌日。
『おはよう。もう起きた?』
そう、いつものように朝のメールをした。
『うん。起きたよ。あのさ、メールでなんやけど…別れよう。』
目を疑った。
別れる?
誰と誰が…?
いつも異常に回転の速い私の頭が理解に苦しんだ。
『なんで…?私のこと嫌いになった?』
『嫌いじゃないよ。ただ、もう好きじゃない。』
スキジャナイ
なんて冷たい言葉なのだろうか。
私はこんなに貴方のことが好きなのに。
私はいつも貴方中心で動いていたのに。
私は貴方だけが…貴方しかいないのに。
スキジャナイ
なんて残酷な言葉なんだ。
それからの私。
友人曰く覇気がないらしい。
コントロールできない私の頭の中。
2学期の中間、期末、そして難しいと言われる外部模試。
人には言わなかったがおかしい点数を叩き出していた。
ミスというミスがない。
先生たちは喜んだ。
全国1位を学校から出したからだ。
壊れているとしか思えないこの状況。
どうして恋することをやめようと思わずにいられようか。
恋することは、それは美しいものだった。
だけど、それを失うときのつらさ、それは残酷だった。
そりゃ、一人で過ごすクリスマスは寂しいものだったけど、家族がいたし、なによりも友達がいた。
「もう、恋なんかしない。」
そう、決めたのに…。
そう、恋を失った、あの日から誓ったはずなのに、もう壊れたくないと思ったのに。
でも、この胸の痛み…。
どうか、どうか、気のせいであって…。
もう、失いたくないの。
幸せだと思う日々。
もう、あんな世界は嫌なの。
暗い、暗い世界は嫌なの。
嫌なんだ。