(29)


あなたと共にいられる幸せ
それは何物にも代えられない
miss you...
だからこそ
want you...
あなたがいないこの部屋
私じゃない何者かが潜むこの部屋
あなたを想うその心


これはROSEと共に歌う『want to spend with you』
“あなたと共にいたい”

タイミングが良いのか悪いのか。

「星羅ちゃん。ど?」
「素晴らしい曲だと思います。だけど…」
「けど?」
「自信がないです。こんな切ないラブソング歌えるか。」
「大丈夫。星羅ちゃんなら出来る。」
「で、多分歌番組とか出なきゃいけなくなると思うんだけど、スケジュールとか大丈夫?」
「大丈夫じゃありません!」
「え!!」
「当たり前じゃないですか!!普通に仕事があるんですよ?」
「社長とかに言って減らしてもらえないの?」
「あの社長がそんなことするわけないです!」
「でも…ダメ?」
「過労死します!」
「そんなに多いの?仕事。」
「多い?そんなもんじゃないですよ。」
「でもさ、曲の宣伝も兼ねて出た方がいいと思うんだけど。」
「これだけは譲れないです。」

「あの…。」
そう言って入ってきたのは高原明。

「な、何?」
「星羅は病み上がりなんです。俺のせいで二日仕事を休んだから、ノルマが膨大に溜まってるんです。ただでさえ年末で忙しいの

に。」
「君が手伝ってあげればいいんじゃない?」
「出来るならそうしたいです。だけど、彼女の仕事は特殊なものばかりで…。俺を含め普通の人には出来ないんです。」
「へぇ、星羅ちゃんって凄い人なんだね。」
「だから過労死するって言ったんだ。なるほどね。」
「でもさ、MUSIC PORTには出ない?」
「そうそう。ヤモリさんに会えるし。」
「でも…。なら、それだけなら。」
「よっしゃ!!」
「明日、レコーディングするから。練習しといてね。」
「分かりました。」

そう言うと、彼らは帰っていった。

「ありがと。」
「ん?何が?」
「だから…。もう!分かるでしょ?」
力強く奴の肩を叩いた。
「ごめんごめん。月がなんか素直だから。」
「なっ!」
思わず赤くなった。
すると奴まで顔を赤くした。
「もう!…馬鹿。」
「はいはい。」

以前より奴の言葉に反応してしまう。

「それより、あの歌、いいね。もう、歌詞とか音程とか覚えたんでしょ?」
「まぁね。大体一回聞けば覚えちゃうから。」
「さすが。」
「当たり前でしょ。」
「それより大丈夫?」
「ん?」
「月、仕事終わりそう?」
「まぁ、何とかしなきゃね。」
「副社長の仕事を手伝うわけにはいかないしな…。」
「まぁね。誰にでも出来る仕事じゃないしね。」
「俺が熱出さなければ良かったんだけどな。」
「それを言うなら、自業自得だもん。」
「ね、歌って?」
「ん〜いいよ。」
「まじで?」
「うっそ〜。」
「やっぱね。」
奴はがっくりと頭を垂れる。

〜♪
あなたとの出会いが
運命ならば
私はあなたの月になりたい
風になりたい
空気になりたい
Want to spend with you
〜♪

「!!」
「助けてくれたお礼よ。」

そう、ただ、お礼なだけ。

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