(36)


私は奴に過去を話した。
奴の反応はというと、
「俺は…それでも月が傷つくのを見たくないな…。」
それは私のためだけの言葉。
「でも、月が寝ているときでもそれでうなされてるとはな…。なんで俺…気付かなかった?俺、婚約者失格だよな…。」
奴の言葉が嬉しかった。
誰かにそう、言って欲しかった。

「傷ついたとき、明さんが…慰めてくれるでしょ?」
「!?」
「慰めてくれないの?」
「今…俺を名前で呼んでくれた…?というか、勿論慰めるに決まってる。ずっと傍にいてやる。…いいや、俺が傍にいたいんだ。」
私は運命の人と出会ったのかもしれない…。
高原明という運命の相手と。
心から、言葉が出てきた…。
「明さん…。愛してるわ。」
自分から抱きつくというオプション付きで。
奴…ううん、明さんはぎゅって抱きしめ返してくれた。
「俺も…ずっとその言葉聞きたかった。」
「怖いの…。傷つくのが怖い。でも…でも…もう自分を止められないの。壊さなきゃ、あの家族は誰も私を見てくれない。」
「大丈夫。俺がついてる…。月の好きにしたらいい。俺がずっと傍にいるから…。」
「明さん…。」
「俺…、月に会うまで女なんて所詮飾りでしかないと思ってた。だけどな、月は全力で守ってあげたいし、傍にいたいし、他の男といるのだって我慢できない。すっげぇ自分が嫉妬深いって知った。月…俺と…俺の妻になってくれませんか?」
嬉しかった。
私には、もう、この人しかいないと思った。
だから…答えは当然のことながら

「喜んで…。」

「本当に?」
「うん。」
「あ、両親に挨拶行かなきゃな…。」
「心配ないわ。あれが実行されたら、縁を切るつもりだから。」
「でも…!!!」
「私が家族を壊したんだよ?もう、あの家族には戻れないし、戻りたくないの…。」
「なら、婚姻届は月の誕生日に出しに行こうな…。」
「うん。」


「潰したら、私、正式に副社長になるの。」
「え?そんなこと聞いてない…!!」
「だって今日社長に言われたんだもの。」
「まぁ、副社長だもんな。元から。」
「そして、明さん、あなたは社長よ?私と一緒に。」
「えぇ?」
「貴方なら大丈夫。私がついてるもの。」
「月…。」
「で、CMのことも私がROSE+moonのmoonだということも全部発表しちゃうの。記者会見で。」
「は?」
「すごい経済効果だと思わない?」
「そりゃそうだろうな。でも、俺としてはばれたら月を狙う奴が多くなりそうでいやだな。」
「あら、婚約してるってこともいうのよ?」
「まじで?」
「まじ。」
「月は俺のものって皆に言えるのか…それはいい!!」
「でしょ?」
「あぁ!てか、今から引越しの準備をしなきゃな!」
「はぁ?」
「新居だよ。俺たちの新しい新居。」
「それはちょっと早くない?」
「善は急げっていうだろ?」
「そりゃあまぁ…。」

ちゅ。

「愛してる。」

は…反則だ…。
私が渋ってるからって思考を停止させる必要なんかないだろ!!!!!

「月、かわいい。」

「こ…。」
「こ?」
「こんにゃろ〜〜〜!!」
と、回し蹴りを一発。

ボゴ!!

綺麗にHITしました!

「ゆ…ゆえちゃん?」
「不意打ちは卑怯だ!!新居の予定は先送りじゃ、ぼけ!!!!!」

「そ、そんなぁ。」

ふ〜んだ。
私が悪いんじゃないもん。
「あんたが私のところに引っ越してくればいいでしょ?」

「ゆ…月!!大好きだー!!!」
「知ってる。」

私、奴にとことん甘くなったな…。

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