(38)


『きゃー!!副社長だわ!!』
『まじ綺麗だよなぁ。』
『あの噂って本当かしら。』

社員はざわつき始めた。

「皆さん、作業中に失礼します。ここに、牧野忠さんがいらっしゃると聞いたんですが…。」
「あ、俺です。」
「少し、お話を伺ってもよろしいでしょうか。」
「あ、はい…。」

この人、以前に私に告白して、姉ちゃんの結婚式に来てた、あの人。

「まさか月ちゃんが副社長だったとはね。」
「あの時はすみません。まだ秘密だったんで。」
「でも、まじですごいよな。」
「いえいえ。話なんですが…姉にはまだ言わないでください。」
「なんで?」
「来月に記者会見で驚かせたいからです。」
「なるほどね。」
「話はそれだけです。」
「ねえ、社長と婚約してるって本当?」
「それは…本当です。家族にはまだ言ってませんが。」
「ふうん。社長に勝てるわけないし…。」
「では、私は仕事に戻るので、失礼します。」
「あ、はい。」

*********************

「牧野〜。」
「何?」
「お前、副社長とどんな関係なわけ?副社長自ら来るなんて。」
「あ〜ただ彼女のお姉さんと友人ってだけ。」
「へぇ〜。あんな美人の姉さんか…。姉さんも美人?」
「ん〜どうだろ。楽しい人ではあるけど美人ではないな。」
「え?妹あんなに美人なのに?」
「でも、気になるな…。」
「何が?」
「内容が家族には内緒にということだったんだ。」
「そうか?」
「彼女はまだ19歳だぞ?」
「あの、噂本当だったんだ…。」
「大学を勝手に辞めてまでここにいる。家族に内緒で。」
「それは家庭内の問題が…。裕福じゃないとか。」
「彼女の父親は建設会社社長でそこそこ裕福だ。」
「じゃあ…。」
「訳がわからない。」
「まぁ俺たちなんかが知ったこっちゃないって。」
「でも…。」

**********************

「瀬野…。これからのスケジュールを…。」
「今から社長とSUNNYの社長を含めた会食となっております。」
「そうですか…。こっちも気を引き締めなければ…。」
「そうですね。会食が終わり次第、今日の仕事はございません。」
「では、行きましょう。」


目の前には高級和食料亭。
慣れない…というかこういう会食は初めてだ。

『いらっしゃいませ。』
「今日会食になっているト○タです。」
『では、こちらに…。』

案内されたのは和室。
まぁ料亭だから和室なのは当然か…。

「初めまして。」
こちらがSUNNYの社長さん。
初めて見たけど…若い。
「初めまして。」
「宮迫くん。座ってください。」
「はい。」
珍しく緊張してる。
「君が業績を上げたんだって?」
「えぇ、まぁそうですね。」
「若いのに…やるね。まぁ僕も他人のこと言えないんだけど。君まだ20歳にもなってないんだって?」
「はい。」
「いいなぁ。社長。宮迫くん、うちに譲ってくださいよ。」
「遠慮するね。彼女は逸材だから。それにうちの息子に嫁に来てもらうんだから。」
「え!あのモデル並の容姿の?いいなぁ。こんなに美人さんなら俺も嫁に来てほしい!」
ん?
なんだか会食っていうより、飲み会に近い…。
「あ、緊張とかしなくていいよ。会食なんて名前だけだし。」
は?
「俺の親父と社長は親友だから、まぁ顔なじみなんだよね。」
「ま、そういうことです。」
「そ、そうなんですか…。」
「君さ、あのmoonなんでしょ?」
「はい。」
「しかもあのCMに出てた。」
「そうですが…。」
「タレントとかに告白とかされたんじゃないの?あの神楽とかに。」
なんでこの人分かるんだろう。
ピンポイントに当ててくるところとか、やっぱり只者じゃない。
「そんなことないですよ?」
「私、聞きましたよ?神楽が今日乗り込んできたって。」
「神楽はただの友人ですよ。」
「でも、あのCMの彼らの目は恋する男だったよね。」
またか…。
「ええ。明が凄く焦ってましたし。今日乗り込んだことを聞いて。」
「え!?」
「彼女がモテるから明くんも大変でしょうね。」
「そうみたいだよ。最近、やっと彼女のハートを射止めたらしいから。それは不安だろうね。」
「親のくせに他人事だねぇ。」
「私は彼女が社にいてくれればそれでいいからな。」
「あ、そうそう。君、この人知ってるよね?」
見せられたのは風姉の写真。
「知ってるも何も、我が姉ですが…。」
しかし、一体どうして姉のことを知ったのだろう。

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