(5)

この打ち合わせにはある思惑があった。
誰と打ち合わせかというとCMに出演するアーティストとだった。
「ちわっす。」
「ずいぶん若い部長さんっすね!」
「どうもー」
「……。」
彼らは男性アイドル事務所であるフルムーン事務所の稼ぎ頭の4人組ユニット神楽だ。
いまやテレビ番組、CMなどでひっぱりだこだ。
なぜ彼らにオファーしたのかというと今回の新しい車ゼウスのイメージにぴったりだからだ。
普通はアーティストである彼らに打ち合わせには参加してもらわないのだが今回は月の思惑のため急遽きてもらったのである。
ちなみに最初に発言したのがグループの顔で人気No1のレン。
次が盛り上げ担当のヨウ。
まとめ役でリーダーのキョウヤ。
そんで寡黙なタクマ。
一応挨拶しなければ。
「今回このCMの担当の蛍原星羅です。今回が初めてなのでつたないところもあるかもしれませんがよろしくお願いします。」
まぁ無難な挨拶だ。
「君何歳なわけ?若いっしょ?」
そう聞くのはヨウ。
「25歳です。若輩ながらこの度から部長に昇格いたしましたもので…。」
「すごいですね。25で部長だなんてそれだけ実力があるってことですよね?すごいなぁ。」
こう言うのはまとめ役のキョウヤ。
「たいしたことないんじゃないの?ずっとびくびくしてるし。」
装っているだけだっての!
人気NO1だからって調子のんな!
そんなこと口にだせるわけないが。
「申し訳ありません。初めてのことですので多少見苦しいこともあるでしょうがそこは大目にみてください。」
「……失礼だよ。レン。」
初めてしゃべった!!
たまがった!
「ちっ、わりぃ。」
こいつぶん殴ってやりたい!!
「ふ…あ、ぶっ部長そろそろ本題に!」
こいつ間違えそうになりやがった。
しかもかなり動揺してやがる。
しょうがない。
二人ともこんな様子じゃなめられる。
なめられんのは癪だし、堂々としてるか。
「分かりました。では、本題に移ります。今回、このCMで一石三鳥。いや四鳥を狙いにいきます。
まずは、私たちの新車ゼウスの売り上げ一位。
これは当たり前ですよね。そのためにCMをするのですから。
二つ目はCMで流す新曲の年間売り上げ一位。
三つ目、流す番組の高視聴率。
四つ目、CMの大賞。
そのために、今回あなた方に意見を聞きにきました。
率直に、どうすればいいか、聞かせてもらえませんか?
私たちに案がないというわけではありません。
ただ、参考までに。」
「こ…こいつキャラ変わりやがった。」
「かっくいー!!なんか素顔とーじょーーー!みたいな?」
「誰もびくびくしているという言葉を肯定しておりません。
まぁ、こちらの瀬野は自分のミスにより動揺しておりますが。」
そうなんだよね。瀬野はまだ青い顔してやがるし…もう、まいっちんぐ♪
「はぁ、これだから。すみませんね。こんなやつらで。」
さっすがリーダー。
やるぅ。
「いえ。では聞かせてもらえません?」
「分かりました。僕からは新しい一面をみせるってところですかね。」
うん。まじめちゃんの意見だね。
「なるほど。これは魅せられるでしょうね。」
「おっれはねーアンサーバージョンみたいな、呼応してるやつみたいなのがいいと思う!!」
次のCMはこれで行ってもいいな…
「おっ、なかなかの妙案です。」
「ちっ、仕方ねぇ。俺はチャリティになるのは…と思う。」
「…それは…いい案だと…思います…」
少しショックだった。
今回ばかりは驚きを隠せなかった。
「……スキャンダル」
「それはスキャンダル性を帯びたものにということですか?」
こくっとタクマは頷いた。
これもイケる案だね。
「さすがアーティストですね。感性が違います。では、私の案を言いましょう。レンさんと同じです。全く同じものを考えてました。私の独断で申し訳ないですが、チャリティの方面で進めたいと思います。まぁ、あなたがたの新たな一面も見せつつ、スキャンダラスなCMにしましょう。」
「……せいら出ればスキャンダラス。」
はい。つっこみどころ満載。
まず、なぜ名前の呼び捨て?
んでなぜ私?
「そっれいいー!」
「いい案じゃね?」
「ほう。賛成です。」
こいつら…殴ってやりたい、そう思ってると。
「だっだめです!副社長を出すなんて!!」
やってしまった…。
力説してしまった瀬野は失言に気付いてない。
「「「「副社長?」」」」
はっと瀬野はするが気付くのが遅すぎた。

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