(7)

…育ち盛り?
んなわけねぇじゃん。
こいつら皆23歳だぞ?
つうか食いすぎだろ!
ちっ、酔ってきた。
やべぇな。
「ゆえ飲んでる〜♪」
「飲んどる〜♪」
「げっ、こいつ酔ってねぇ?」
「敬語なくなってるねぇ。」
「しゃあし!俺は酔っとらん!(しゃあしい=うるさい)」
「ゆえはどこ出身なのぉ?」
「F県。」
「…なるほどね。」
「今こいつに質問したら全部答えるぞ?」
「じゃあ僕は、家族構成聞きたいなぁ。」
「姉ちゃん3人にお母様ひとーりにぃ、…くそ親父なんか…」
あーあ、朝の夢、思い出しちゃったじゃんか。
涙でてきちゃうじゃんか…
「えっ?どっどうしたの?」
「あーあ、キョウヤ泣かしちゃった。ゆえ〜泣かなくてもいいんだよぉ?」
そう言ってヨウは月の肩を抱く。
「…ヨウ離れろ。」
「ゆえに寄るんじゃねぇ。」
「いやだなぁ。慰めてるだけなのにぃ。」
キョウヤは一人あわあわしてる。
「…あたしがあんたの人生壊してやる。」
そう呟いているのに気付かず、まだ言い合いをしている。
酔いが醒めてきたようで月は落ち着きを取り戻しつつあった。
「すいません。なんか酔ってたみたいで…。」
「…あのさ、さっき泣いてた理由教えてくれない?」
キョウヤは泣かしたことを引きずっているのだろう。
私にとっては触れられてほしくないところだ。
こんなことになったのも朝の夢のせいだ。
「聞かないでください。これはあなたたちが触れていい問題じゃないですから。
多分これを聞いたら、あなた方は私に失望しますよ?このことに関して私を止めたらきっとあなたたちはただではすみませんから。それくらいの覚悟はおありですか?」
「…失望なんか…しないよ?」
意外にも一番最初に口を開いたのはタクマだった。
「そうだよぉ〜」
「まぁ覚悟はできてるつもりだよ。」
「今更だろ。」
「まぁ、いいでしょう。
私は先ほど申したとおり四女で末子です。父は男系の生まれから今回男児の誕生を望んでいました。
しかし、生まれたのは女児。女だったことがショックだったと聞いております。しかし、父は姉たちとは年の離れて生まれた子供だけにかわいがってくれました。
かわいがったと思っているのは私以外の周りだけでしょうが。
父の性格はからかって嫌がるのを見て楽しむというものでした。だから昔から月太郎と私を呼んで私が嫌がる反応を楽しんでました。
そして親戚と会う場所でいつも本当は男児が良かった、と言うのです。私の目の前で。
それでも、やはり自分の父なのでなついてました。父が面白がるように馬鹿なふりをし、敢えてテストではいい点数をとらず平凡で中学校生活を過ごしていました。
年頃でしょうか、父に逆らいたいと思うようになりました。だから、テストでは常にトップ。
しかし、父は信じてくれませんでした。周りが馬鹿なだけだ、というだけです。進学校に通っているにもかかわらず。
少しずつ反抗しはじめ、とうとうその日はやってきたのです。
いつものからかいに耐えられず、少し父をからかいました。
すると、父は怒鳴り、『子供が親をからかうな』と。ショックでした。
自分は私をからかって遊ぶのに、子供である私には楯突くなといいます。
親は子供を傷つけていいのか、私はいつも傷ついてたのに…苦しかったのに…
私はその場にいることなんて出来なかった。何言っても否定されるだけだから。その場を離れようとしました。
しかしあいつは…腕をつかみ『逃げるのか?』と言ったんです。あいつのあの蔑んだ眼。今でも忘れられない。
あいつを振り払い、自分の部屋で泣きました。
すると母が部屋に入ってきて、あいつを怒らせたことを怒るんです。
母だけは信用してたのに…母だけは私の味方だと思っていたのに。
ショックに耐えれず過呼吸を起こしたんです。でも誰も助けてくれない。
翌朝、母は私を無視しました。
あぁ、もういらない子なんだ、そう思ってしまうんです。母が父に逆らえないことは分かっていました。
そんな状況に陥れた父を憎まずにはいられなかった。
その時初めて殺人願望を覚えました。しかし、あんなやつ殺して私の人生が狂うなんてばからしい。
じゃあどん底に陥れてやろう。そのためには手段を選ばない。
それから私は県外の大学を目指し、そしてあいつと同じ建築士の道を選びました。
あいつは一応建設会社の社長です。そいつをどん底に陥れるのは簡単。会社を潰せばいいだけ。父には私がしたとは明かさずに。そして父の死に際でこう言ってやるんです。『お前の大事なものを奪ったのは私だ。』と。
そのためにまず信頼回復から始めました。今回この地位に座ることは想定外でしたが、それはうれしい想定外です。
もうすでに第一段階が始まっています。だから、家族には言わないのです。これが入社の条件でした。」
4人は複雑な顔をしていた。
まさかここまで深かったとは思わなかったからである。
誰もが彼女を止める術が分からなかった。

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