(10)


『さて、この季節がやってまいりました!!皆、盛り上がってるかぁ??』
『イェーイ!!』
アナウンスと共に歓声があがる。
『今年のミスター・ミスコンテストは例年と一味違いますよ?なんてったって、あのモデルが登場しますから!!』
『キャー!!』
『YUMA〜!!』
『では、候補者に登場してもらいます!候補者を見て明日までに投票箱にいれてくださいね!!では、どうぞ!!』

『キャー!!』
黄色い声援が絶え間なく聞こえる。
『かっこいい〜!!』
南くんに対する声が一際大きい。

南くんを見てみると…。
あ、目が合った。

ドキドキ。

でも、モヤモヤ。

ずっとそんな状態だった。
こんな状態になったことなかったから。
どうしていいのか分からない…。

『ありがとうございました!では退場してください!!』

はっとして横を見るともう、他の人は退場しようとしている。
あ!私も退場しなきゃ!!そう思ったのはいいものの、足がもつれて…
こっこける!!
そう思って目を瞑ると…。
「あっぶねぇ。」
え?
「南くん?」
「滝沢さん。今日おかしすぎ。」
そういうと私をひょいっと担いだ。
いわゆるお姫様抱っこ。
「ちょ、ちょっとおろしてよ!!」
でも、そんなことでおろしてはくれないわけで、
「やだね。」
「は、恥ずかしい!!」
もう、観客の悲鳴だかなんだか聞こえないくらい恥ずかしかった。

袖に入ってもなかなかおろしてくれなくて、
「本当に今日はどこか変。このまま帰る?」
「いや!!変じゃないもん!!というかお〜ろ〜せ〜!!」
いつの間にか秋子が隣にいて、
「そうよ!!おろしなさいよ!」
加勢してくれる。
「まぁ、いいか。なんだかいつも通りになったし。」
はぁ〜、やっと降ろしてくれた…。

それを見てすかさず秋子は私の腕をとり、
「じゃあ、今日は自由だから校内まわろ!」
と行って連れ出してくれた。

そこに、担任が現れた。
「お?異常な滝沢発見。」
「異常、異常ってやめてくれません?先生。」
「だって異常なんだもん。」
いい歳こいてその口調…。
「先生、なんか用っすか?」
「あぁ、そうそう。宮迫先生見なかったか?」
「見てませんけど。」
「あ、もしかして風先生のところに奥さんがいるわけ?」
秋子がチャンスと思って先生をイジる。
「お〜、岡部。俺で遊ぶのは100万年早いぞ〜。まずは万年赤点組からの脱却から始めろ〜。」
「ちっ。」
「秋子…。あんたには先生は無理よ…。奴は手ごわい!!」
「お?滝沢〜?奴って誰のことかな〜。」
「そりゃ〜、私を異常呼ばわりする目の前の教師のことですよ〜。先生なら分かってるくせに〜。」
そんなやりとりをしていると、ふと、声がした。

「悟〜!!」
「あぁ、花。どこ行ってた?」
「風のところ。ちょっとからかってきた。」
「風ちゃんもかわいそうだな。」
「何言ってんのよ〜。あたしなんかまだかわいいもんよ?妹の月とかあの子を呆れた目で見てるもの。」
「ははは。さすが月ちゃんだ。」
先生夫婦は二人の世界だった。

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