(11)

「あの…。」
声を出したのは秋子の方だ。
「あ、悟の教え子さん?ってことは異常な滝沢さん?」
「それは、こっちです。」
「先生!!奥さんにまで異常って言わないでくださいよ!!」
「まさか、異常な滝沢さんがこぉんなにかわいいとは。」
「だぁかぁらぁ、奥さんも人のこと異常って言わないでくださいよ!!」
「あはは。面白い子だわぁ。」
「だろ?からかいがいのある子だろ?」
「そうね。月をからかうより倍楽しいわ。」
「月ちゃんって何歳だっけ?」
「夏で20歳よ。」
「先生の奥さんと妹さん、歳離れてますね〜!」
秋子が言う。
「そうなのよ。あ、先生の奥さんじゃなくて、花さんって言ってね。」
「「はーい。」」
「花さんの旧姓って宮迫ですよね?」
「そうよ。それがどうしたの?」
「宮迫月…3歳差…!!」
「どうしたの?秋子。」
「あの、宮迫先輩ですか?」
「ん?月って有名なの?」
「あ〜有名だな。ミスコン3連覇で、秀才。」
「でも、K大でしょ?」
「月ちゃんって本当はすっげぇ頭いいんだぞ?お前知らなかったのか?」
「は?」
「俺が模試を一回本気で受けてみろって言って叩き出した点数何点だったと思うか?」
「さぁ。」
「はぁ。満点だよ。満点。」
「テストが簡単だったんじゃないの?」
「難関模試だぞ?満点な奴なんてあいつ以外いないし、その模試で初めての全教科満点だぞ?そうか…家族がこれだからか…。」
「どういうこと?」
「あいつは結果を隠したがっていたからな。」
すごい…。
そんな人が風先生の妹さんなんだ…。
私も、秋子も口がぽかんと開いている。
「そうか…だからか…。」
「何が?」
「お前、結婚式の時、月ちゃんの様子おかしかったの知ってただろ?」
「あー。」
「あいつ何考えてるんだ…?」
「月さんの話してるんですか?先生。」
「お前、知ってるのか?」
そう言って入ってきたのは南くん。
「知ってますね。勉強教えてもらってますから。」
「なんで!?」
そう声出したのは私。
「ん?月って確か、K県にいるはずなのになんで、知ってるの?モデルのYUMAくん。あなた、K県に行くことなんて無いでしょう?」
「家族なのに何も知らないんですね。鳥さんは知ってましたよ?」
「そうか…。花、俺調べてくることがあるから!」
「あ、うん。私も鳥に…聞いてくる!YUMAくん。このこと誰にも話しちゃダメだから!風になんか絶対にダメだからね!」
そう言うと花さんは去っていった。

「ねぇ、なんで南くん。月さんのこと知ってるの?」
「ん〜、バイト先にいたんだ。」
「バイト先に?バイト先って東京じゃないの?」
「ここだけの話…。」
南くんはいろいろ話してくれた。
月さんは私なんか足元にも及ばないすごい人だった。
秋子もますます月さんファンになっていた。
※月が主役の「月は青い」を参照してください。

でも、どうしてだろう。
南くんから月さんのことを聞けば聞くほど涙が出てきそう。
なんだか、自分が…分からない。
「ちょっと、じゅん、トイレ行かない?」
「え?あ、うん。」
そう言って南くんのところから連れ出してくれた。

「じゅん、もしかして…。」
「ん?何?」
「もしかして、委員長といると胸がきゅーってなったりモヤモヤしたりしない?」
「え?よく分かったね。そうなんだよ〜。何かの病気かな?」
「それは、病気も病気。恋の病よ。」
「え!?どうしてそうなんの!?」
「やっぱり分かってなかったのね。」
「え?」
「でも、まぁこのままでもいいか。あいつにとられるの嫌だもの。」
「ん?」
秋子の言うことがさっぱり分からなかったじゅんであった。

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