(7)


え〜、あの宣言から数日。
南くんは特に何もしてこなかった。

かのように見えた。

南くんの本性は人気モデルのYUMAで、その性格は本当はすんごい俺様だってことを知らされました。
トホホ。(古いな、自分。)
毎日、夜中の散歩にはついてくるし、帰りは一緒に帰らされるし、朝は毎日迎えに来られておかげで遅刻がなくなったし。
遅刻しなくていいじゃんって皆さんはお思いになるでしょう。
が、しかし!
きのぴーには天変地異だとか、担任には地球滅亡だとか、翔には病気かと疑われ、秋子は恋かと聞かれ、比呂は…まぁ特には言わ

れなかったけど、すっごい疲れたんだから!!

で、今は何の時間かというと、文化祭の準備でございます。

「異常な滝沢と南〜、進行よろしく!」
「先生…、異常って言うな!!」
「いや〜、だってここ数日、お前遅刻なしだぞ?あの滝沢が!これが平常に見えるわけがない!!」
「失礼な!そこは先生として良かったと思うべきでしょ!!」
「滝沢さん、そろそろ始めましょう。」
「そうだぞ〜。早く始めろ〜。でも、滝沢〜、お前先生に向かってそんなこと言っていいのか?」
「横暴だ!!」
わははとクラスメイトは大爆笑。
しかし、ちらりと横を見ると不機嫌な顔が。
まぁ、そんなのは無視して、私はただ南くんが説明するのをただぼうっと聞いていた。

「それでは、作業を始めてください。」
その南くんの言葉で一斉にクラスの人たちは動き始めた。

「じゅん〜。あんたの衣装、これだってさ。」
秋子が私の衣装を持ってくる。

うわ〜。
めっちゃかわいい。
ベージュのワンピースなんだけど、胸のところに薔薇のコサージュがついてるのがものすごくかわいい。
「うわ、これめっちゃかわいいじゃん。これ、手作り?」
「そうよ〜。じゅんのために衣装係の子たちが一生懸命作ったのよ!着てみな!」
「うん。」
着てみると、すっごいよく出来ていた。
「うわ、あんためっちゃかわいいじゃん。今年のミスコン優勝じゃない?」
「え〜、やだ。めんどくさい。」
「でた。じゅんのめんどくさい病。あんた本当はすっげぇかわいいくせに口の悪さとかぼーっとしてることで台無しにしちゃうん

だよね〜。」
失礼な。本当はってどういう意味だ!!
「うわ!じゅん?似合うじゃん。」
そう言ってきたのは馬鹿の翔。
「まぁ、でもおぼろの方が数倍かわいいけど。」
「はいはい。あんまり言うと、まじであんたのかわいいおぼろちゃんを独り占めしちゃうからね。」
「げ。」
「本当にそれ着たらおしとやかに見えるな…。」
そうつぶやいたのは翔の相方の比呂。
「おしとやかに見えるってどういうことよ!普段から大人しいわい!」
「あんた、その口調がダメだって…。」
「滝沢さん!」
そう呼んだのは他でもない、南くんだ。

「何?」

物凄いご機嫌ななめな南くん。
「どうしたの?」
「はぁ、なんで俺、この出し物に反対しなかったんだろ…。」
「は?」
「滝沢さん、かわいすぎ。これ以上敵増やすの嫌だったのにな…。」
「は?何言ってるの?」
「鈍いよな…滝沢さんって。」
「だぁかぁら!何言ってるの!!」
「まぁ、いいや。俺が気をつければいいことだし。」
じゅんにはさっぱり訳が分からなかった。
「もうすぐで終わるから、着替えてきたほうがいいよ。」
「あ?わかった。」

南くん…。なんだったんだろう…。

言われたとおりに着替えて、授業が終わった。
放課後の教室にたまっている女子生徒。

『YUMAって超かっこいいよね!』
『うん。彼女っているのかな。』
『いるでしょー。そりゃすっごいかわいい女の子が!』

「彼女…か。」
なんだか胸がちくってなった。
それが恋だと気付くのはまたずっと後の事。

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