(8)

今日は文化祭当日。
外部からのお客さんが沢山来ている。
私たちのクラスはというと、大盛況。

『滝沢さん、5番に指名です!』
そんなクラスメイトの声が聞こえる。

これで、6度目の指名。
休みなしの。

『君が、じゅんちゃん?ちょーかわいいね!』
茶髪でいかにも軽そうな男が指名してきた。
「指名ありがとうございます。」
『ね、俺と付き合わない?』
「あの、そういうのはちょっと無理なんで…。」
『いいじゃん、いいじゃん。俺、君の事すっげぇ気に入っちゃったからさぁ。ね?いいでしょ?』
しつけぇな!!
そう思っていると、
「お客様、そういった類のお誘いは禁止となっておりますので…。」
現れたのは南くん。
『あ?なんだてめぇ。邪魔すんな。』
「しかし、彼女も嫌がってます。」
そうだそうだ!
『あ゛ぁ?瓶底眼鏡が俺に楯突いてんじゃねぇ。俺がかっこいいからって僻んでんのか?』
そいつはとんだ勘違いだ!
まず、お前はかっこよくないし、南くんのほうが何十倍かっこいい。
なんてったって人気モデルだし。
「そういうつもりはございません。ですが、あなたの所有している鏡を買い替えた方がよろしいかと。」
『あ!?てめぇ、ふざけてんじゃねえよ。』
男が南くんに掴みかかった。
南くんの言うことは正しいけど、言いすぎだよ。
「ふざけてなんかいませんけどね。」
『こ、こいつ…。』
男が南くんを殴った。
その拍子であの眼鏡が…。
『こ、こいつ…!?』
きゃー!!
周りで見ていた女の子が黄色い歓声をあげた。
「だから言ったんです。僻んでるのではありません。」
そう、淡々と言う南くん。
「ただ…、滝沢さんにちょっかいを出すのは許せませんね。」
ギロリと男を睨む。
それを見た男はそそくさと逃げていった。

「南くん大丈夫なの?」
「何が?」
「ばれちゃったよ?」
「あぁ、それか。」
「あぁそれかじゃないわよ!ずっと隠してたのに、私のせいで…。」
「君を守るためなら、そんなこと、たいしたことじゃないよ。」

キャー!!!
黄色い歓声がまた聞こえた。
私たちの会話を聞いていたのだろう。

私は恥ずかしくなって俯いた。
「どうした?」
そう南くんは尋ねてくるけど照れたなんて恥ずかしくて言えないよ。
「み、見ないで…。」
「そんなこと言われたら見ないわけにはいかないね。」
い、意地悪!!
まぁ、そんなこと前から知ってたけど。
「あらぁ、委員長ってモデルのYUMAだったのね〜。」
そう言って登場したのは親友の秋子さん。
「そんな嘘っぽいこと言うもんじゃないよ。岡部さん。知ってたくせに。」
「あら、ばれてたの?」
「俺を誤魔化せると思えるの?」
「思えないわね。でもね、じゅんはやらないわよ。」
「あぁ、そっちもばれてたのか。」
じゅんをほっといて美男美女が互いに威嚇している。
こ、こえ〜。
「じゅん。こっちに来なさい。」
「へ?」
「この子は本当に鈍いっていうか…。」
「何よ!!皆して鈍いって!」
むっとふくれてやるんだから!

「そんなところがまたかわいいんだよ。分かってないな…。さて、俺は戻るか。」
といって飛ばされた眼鏡を再びかけて厨房に戻っていった。

「キィー!!あんたも気をつけなよ!」
「何を?」
「委員長によ!あいつ、性質が悪いから。どこからどこまでが計算なんだか!」
「え?」
「はぁ。あたし、じゅんのそういうところが好きよ。」
「は?」
「あんたには次の指名が入ってるから。さ、行きな。」
「う、うん。」
私は秋子の言うとおり、指名された場所に行った。

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