(6)

*SIDE翔(ここからはシリアスな場面が多くなるので会話以外は標準語です。)

この時はまだ幸せだったんだ。
何も知らなかったから。
彼女に降りかかる悲劇なんてどうやって知ることができる?
ただでさえ彼女は自分の家族のことを話したがらないのに。

ピーンポーン

返事は無かったが、ドアががちゃりと音を立てた。
「先輩!おはようございます!」
そういった彼女の服装はいつも見る制服と違って少し清楚な感じだ。
ちかっぱかわいいやんか…。
「お…おはよう。」
「先輩の私服姿初めて見ました!!かっこいい!」
そう、素直に言ってくれるおぼろ。
思わず顔がにやける。
「おぼろも可愛い。」
「あっありがとうございます…」
照れとる!!まじで可愛い!!
「ここで話すのも何やし、いこっか?」
「はい!!」
マリノアまで直で行けるバスとかないので、一旦姪浜駅まで行ってからバスに乗ってマリノアに行く。

「どこ見て周る?」
「う〜ん。服を見てもいいですか?」
彼女は控えめにそう言うときょろきょろしながら自分に合う店を探しはじめた。

「ここ入ってもいいですか?」
そういって入ったのはまさにおぼろにぴったりなお店だった。
正直、俺は入っても何も出来なかったが、おぼろが迷ってる姿はなんともかわいらしかった。
彼女は俺の意見を聞いて、そそくさと会計を済ませた。

ふと時計を見るともう昼食時だった。
「そろそろ飯食うか?」
「はい♪」
そう言って入ったのはもんじゃ焼きのお店。
イカとかおもちとかチーズが入ってる奴を二人で食べた。
彼女は猫舌らしくてふーふーしてる姿がまたかわいい。
俺はドキドキしていた。
それは、観覧車。
観覧車といったら密室だろ?
ってことは…待ちに待ったキスのチャンス到来だろ!!
今まで、本当によく我慢してきた自分を褒め称えたい!
飯を食い終わると、
「観覧車乗りません?」
と照れながら提案してきた。
待ちに待ったこの瞬間!!
「乗ろうか。」
と紳士的に言いつつも心の中では下心で満ち溢れている。

二人だけの時間。
たわいも無い会話をし終わった後、俺は勇気を出して
「キスしてもいい?」
ドクドクドク
「…はい。」
よっしゃー!!
彼女にそっと口付けを交わし、二人で照れながら再び会話をして観覧車を降りた。

再び俺たちはいろんなところをまわった。
プリクラとったり、UFOキャッチャーでぬいぐるみをとってあげたりもう、本当に楽しい時間だった。
辺りを見回すと、すっかり暗くなってきていて、俺らは帰ることにした。
バスに乗ってまた、姪浜駅に行き、またそこからバスに乗って彼女の家の近くで降りた。
あと少しで彼女の家というところ。
事件は起きたんだ。


信号を待っていると、ドンという誰かがぶつかる音がした。
隣を見ると…おぼろがいない!!
ふと前を見ると、そこには飛び出してしまったおぼろがいた。
その瞬間。
キィーーーーーー!!!
車のブレーキの音が鳴り響いた。
目の前が真っ白になった。
俺の大切な、初めて愛しいと思った彼女が車の下敷きになっていたから。
「おぼろ?おぼろーーーーーーー!!!!!!」

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