(4)

「両者、はじめ!!」
竹刀がぶつかる音が響く。
「やめ!!勝者は――――」


「騎士の力試し大会に出てみてはいかがですか?」

陛下のこの言葉が発端で私はその大会に出ることになった。
優勝商品は有名な刀。
私の実力を試すいい機会だと言って陛下は薦めてきたのだった。
これから、初戦。
相手はロベルトという人。
相手が女の私とあって、とても余裕な面構え。
その顔崩してやる。
基本的に負けず嫌いな性格。
相手が男だろうと負ける気はさらさらない。

「両者、はじめ!!」
審判が開始の合図をした。
ロベルトは私を瞬殺したいようだ。
振りが大きい。
余裕…。
「やめ!!勝者、ミュー。」
この国ではミウとは言いづらいらしく、ミューで登録した。
相手はとても、悔しそうだ。

順調に勝ち進み、次は決勝。
相手は去年の優勝者らしい。
こいつも余裕綽々だと思っているらしい。
面白い…。
少しは遊んであげる…。
「両者、はじめ!!」
最初は押されてるように見せかけた。
やはり、大したことない。
これが去年の覇者?
ざけんな!
隙をつき相手の背後にまわり、こつんと竹刀を相手の頭にぶつけた。

客はその光景に息を呑んでいる。
審判も。
「やっやめ!勝者、ミュー!!」
一気に会場が沸いた。
一番歓声をあげてるのはやはり、女性からだった。
自分と同じ女性が男性に勝ったのがさぞ嬉しかったのだろう。
しかも、誰もが私が負けると思った瞬間、私の勝利が決まったのだから、驚いても仕方のないことだ。
私は賞品をもらい、腰にぶら下げた。

コメントを司会者から求められたが、そんな性格ではない。
あっさり断った。


それからというものの、私の弟子になりたいと志願してくるものが後を絶たない。
しかし、全て断った。
私はまだまだ未熟者。
まだ、父のようにはなれない。
だから断った。
しかし、転機は訪れた。
「ミュー、あなたには、騎士たちの稽古をつけてもらいたいのですが…。」
陛下の頼みだ。
断れるわけがない。
「喜んでお受けいたします。陛下。」
「陛下というのはやめてくださいと言ったでしょう?アレウスと呼んでください。あなたは蒼き狼なのですから。」
王様に向かってそんな口きけるわけがない。
「そのようなことを頼まれても出来ません。この国では陛下がトップなのですから。」
「では、命令です。」
そこをついてきたか。
この王様、意地が悪い。
「仕方がありません。アレウス。分かりました。」
アレウスはにっこりと笑った。
悩殺スマイル、そんな言葉が似合う。
「では、訓練場に向かってください。」
そう言われ、訓練場に向かった。

「あれが…今年の覇者!?」
「かわいい顔して、本当に強いのか!?」
そんな言葉がちらつく。
ああ、うざったい!!
「文句のあるやつは帰りなさい。本当に強くなりたいものだけでよい!」
そう言ってやると、またざわつき始めた。
「…はぁ。では、文句のある奴、前に出ろ。まとめて相手になってやる。」
正直、力もないくせに他人をどうこう言う奴は腹が立つ。
私の言葉にざっと数十名、前に出てきた。
赤信号、皆で渡れば怖くないってか?
侮るな!!
「誰からでもいい。かかってこい。」
まぁ、準備運動だと思えばいい。
私はそう思うとどんどん竹刀を騎士たちに打ち付けてやった。
造作ないことだ。
あっという間にいちゃもんつけてきた奴らを叩きのめした。

「これで終わりか?まだ、私はまだ2割の力も出してない。準備運動にもならん。」
そう言うと、さっきの奴らは土下座して一斉に自分の非を認め、謝り始めた。

そうして、騎士の腕の底上げが始まった。

BACK* SERIESTOP* NOVEL* INDEX* NEXT