(6)

「アレウス。お呼びですか?」
「あぁ、ミューは慣れましたか?ここの暮らしには。」
「ええ。みんないい奴らですから。」
この頃は気持ちが表情に現れることが多くなった。
これもあいつらのおかげ。
にこって笑うと、アレウスは真っ赤。
「…そんな顔が出来るようになったのですね。」
「前にいた世界では私はただの飾りでしたから。嬉しいんです。私自身が必要とされることが。」
「…そんな奴ら、殺してしまいたい!!」
ぼそっとアレウスは呟いたが未羽には聞こえなかった。
「はい?」
「いや、何でもないんだ。それより、僕と手合わせしてくれませんか?」
「勿論。それより、アレウスは陛下なのですから私に敬語使わないでくださいよ。」
「ミューも敬語が取れるのであれば構いませんよ?」
「アレウスは意地悪…。」
「ミューにだけね。」
「???」
「それより、行こう。」
騎士たちにアレウスは腕が立つと聞いていた。
初めて相手にする人には必ず用心する。
侮るなかれだ。
聞いていた通り、騎士の誰よりも強かった。
結構本気になった。
負けないけどね。
「…参りました。さすがだね。俺も就任する前は力試しで優勝してたんだけどな。」
「ここで負けてちゃ、この国救えないでしょ。ってかアレウスって俺って言うんだ…。意外。」
「一応王だからね。普段は私って言うけど、素ではこんなもんだよ。それより、弓の大会に出るんだろ?」
「うん。氷狼は誰にも渡さない。だって一応蒼き狼だもん。」
「そうだね。あれは君に相応しい。」
「でしょ?」
「さて、公務に戻るか…また手合わせしてな。」
「うん。」


弓の力試し大会当日。
剣と違って、それなりの強豪がいるようだ。
弓の力試しはどれだけ飛んでいる1センチ四方の紙を撃てるかを競う。

他の参加者は私が剣の達人と知って油断はしてこなかった。
でも、早々負けるつもりはない。

順調に勝ち進んで、決勝戦。
相手はデイモス。
弓隊隊長。
私と同じ軍トップ2。
「お手柔らかに。」
「そちらこそ。」
そう会話をして臨んだ。

「はじめ!」
制限時間は1分間。
次々に私は紙を落としていく。
相手も然り。
「やめ!!集計!」
数分の沈黙。
負けるつもりはさらさらない。
「勝者、ミュー。」
一気に会場が沸きあがった。
剣と弓を同じ人物が制したのは初めてらしい。
しかも、女。
コメントをと言われたが、丁重に断り、氷狼を手にいれた。
デイモスが近寄ってきて
「さすがです。俺も頑張ったんですが…。」
「貴方はどの方より腕が確かです。ただ、相手が私だっただけ。」
「敵わないなぁ。噂の少女だし。」
彼はNo.2なだけあって私が蒼き狼ということを知っている。
「というか、これであなたのファンがまた増えましたね。」
「そんなことないですよ。」
「いえいえ、その美貌にその実力。女のファンが増えますよ!!」
「あぁ、そっちですか。複雑ですね。同性に好かれるのも。」
「男はどっちかというと尊敬の眼差しですからね。」
「私は弟子入りはしない性質なんですがね。」
「ははは。やはりあなたは面白い。今度弓隊の稽古にも来てくださいね。」
「弓隊にはあなたがいらっしゃるから大丈夫ですよ。騎士隊で手一杯ですから。」
「そうですよね…。」
「では、また。」

デイモスと別れるとアレウスと会った。
「おめでとう、ミュー。」
「ありがとう。」
「凄かったよ。本当に。それで頼みなんだが…。」
「次はどの指名手配の輩を消せばいいの?」
「この男。」
そう指差したのは盗賊で剣豪のアトラスだった。
「面白いわね。でも彼は殺さないわ。」
「うん。彼を軍に入れたい。というか、彼から決闘を申しこまれている。彼が負けたら我が軍に、君が負けたら彼の妻だと。」
「そういうこと、なんで黙ってするの!?」
「君は負けない…。」
「分かってるわよ。」

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