(8)

「敵はこのダヌ海岸から攻めてくる。ここを弓隊の2から5番隊…。」
軍の説明をしておくとまず、大きく二つの隊に分かれる。
それが弓隊と騎士隊。
その隊の中でまたさらに2000コの小隊があって数が少ない小隊ほどエリートになるわけ。
この小隊は平均8人で編成されている。
隊長は隊の指揮をとるわけだ。
ずば抜けて腕が立つので、主に単独行動しつつ指揮をとる。
んで、私の総指揮官は隊長に指示をし、基本的には一人で敵をなぎ倒していく。
そんなことができる人物は限られていたからこの地位には誰もいなかった。

今、この指示をしているのは、軍師のヘルメス。
年の功だけあって、的確。
私は、特攻隊として敵国に攻め入る。
最近は魔法も上達してきたためまた数段と技が増えた。
魔法は杖で行うため普通の武器なら杖に持ち替えなければならないのだが、蒼狼と氷狼はそのまま魔法が使える。
それを活かした技だ。
風、土、炎は有効なものになったが、まだ水と雷は研究中。
ヘルメスが言うには、精霊と契約するともっと強力な技が手に入るとか。
ヘルメスは雷の精霊のユピテルと契約している。
どこにどの精霊がいるのかとかは不明らしい。
誰にでも精霊と契約できるわけではなく、精霊の方から心に契約を持ちかけられない限り契約できないらしい。
だから、ヘルメスは本当に凄い人物。

明日の朝、私たちは敵のダナ海岸に入る。
多分沢山の騎士が向かえうつだろう。
私が先頭に立ち、降ってくる弓を払い、突撃。
悪くないでしょ?
んで、私ができるだけ多く敵をなぎ払うかが勝利の要になる。

「出発!!」
私は特攻部隊に指揮をした。
アレウスとの別れはつらかったが、「必ず帰ってくる」と約束した。
船に乗って5時間。
ようやく岸が見えてきた。
「集中しろ!絶対に今から気を抜くな。絶対に皆で生還しよう!!」
その言葉で皆の士気が上がった。

上陸。

予想通り、一斉の弓矢が降りかかる。
「…ウインド」
ひゅうっと音がして、弓矢が全て落ちた。
「突撃!!!」
その合図で一気に攻め入る。
私はというとその合図とともにジャンプし風で上空まで行きそこから弓矢を集中攻撃。
しかもその矢は炎を纏っているため、一気に4分の1の敵陣の敵をなぎ払った。
着地して、素早く身を屈めつつ突っ込み、剣で致命傷を与えていく。
そうかと思えば再びバク転のように飛び上がり相手の首を掴み投げ飛ばす。
騎士たちの援護をしつつ、確実にしとめる。
20分後。
2万いた敵軍をたったの1000で破った。
圧倒的な力の差。
敵はこちら側の数で油断したのだろう。
昔の騎士達ならともかく、数段に実力があがった騎士達ばかり。
そして何より未羽が大半の敵を倒したのだ。
どこから来るかもわからない攻撃に相手は翻弄された。
魔法を使うことなど全くの想定外だったのだろう。


「ミュー!!さすがだったな。やっぱ俺の嫁にしたかったぜ!!」
「自分より強い妻って嫌じゃないっすか?」
「フォボス。帰ったら本気の手合わせしようね☆」
「おっかねー!!」
「アトラスも馬鹿なこと言わないの!!私に負けたんだから。」
「へいへい。つうか、魔法使えたんだな!!」
「密かに訓練してたの。技に幅ができんじゃん。」
「あの、炎の弓矢はなんつう技なんっすか?」
「あれは朱雀。」
「ていうか、あの土を魔法で盛り上げて防御なんてせこいっすよね。」
「使えるもんは使っとかなきゃね。」
「俺も使えるようになりてぇな。」
「僕もっす!!」
「国宝級の剣じゃないと無理。てか、魔法も使える剣ってこれだけだし。」
「そうっすよね〜。」
「なんかいい方法ねえかな。これじゃミューとの差が大きくなる一方じゃねえか。」
「あたしに追いつこうなんて1億年早い。」
「ちっ」
「この国のだれかが剣の精霊と契約すれば出来ないこともないけどね。
この剣の元持ち主も剣の精霊と契約して蒼狼でも魔法を使えるようにしたってきくし。」
「それが出来たら苦労はしねぇ。」
「そうっすよ!!」
「どっちにしろ、魔法を使えるようにならなきゃ駄目だけどね。」

軍の人たちと静かな宴をし、床についた。

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