そこは綺麗な水が流れる川辺。
セシルとマーガレットは二人して花をひとつずつ洗っていた。
「マーガレット。あなたは本当はこのように花売りをするような身分ではないのでしょう?」
「…なぜそう思われるのですか?」
「話し方など…教養のある方だと思ったので。」
「確かに、私は農村の出ではありませんわ。」
「それならなぜこのようなことを?」
「私の勝手でしょう?初対面の貴方には関係のない話ですわ。」
彼女は苛立った。
自分の為すことをけなされた気がしたからだ。
「関係のない話ではありません。」
「どうして?」
「私は貴女に興味がありますから。」
マーガレットの顔はみるみる赤くなっていく。
「そっそれはどういう意味で?」
「そのままの意味ですが。」
二人は確実に互いを意識し始めている。
しかし、どちらにも自分の素性を打ち明けれない秘密があった。
だから惹かれつつも嵌ってはダメだと自分に言い聞かせた。
マーガレットはご存知の通り、元総司令官で現反乱軍のリーダーの娘。
一方セシルはというと、彼は国王の息子、つまり王子だった。
普通なら王子であるセシルの顔を国民であるマーガレットが知っていてもおかしくないのだが、これには理由がある。
国王は自分が一番目立たなければ気がすまない性格
彼の存在は国民に知らせてはいても、容姿の良い彼を表舞台には出さなかった。
国王軍側の人間と反乱軍側の人間。
お互いの素性を知らずに、知らせずに惹かれあう二人。
これをどうして悲しまずにいれようか。
「またどこかでお逢いしましょう。」
「ええ。いつか。」